The World of Dorothy L. Sayers

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Dorothy L. Sayers

 このサイトではイギリスのミステリー作家、ドロシー・リー・セイヤーズ(Dorothy Leigh Sayers)を紹介しています。
 セイヤーズは主に20世紀前半に活躍しました。1920年代から第二次大戦勃発の1939年までの期間はミステリーの黄金時代(Golden Age)と呼ばれ、今日巨匠と呼ばれている多くのミステリ作家が登場し、活躍しました。セイヤーズもこの時期に代表作を発表し、人気と高い評価を得ました。彼女の作家デビューは1923年で、アガサ・クリスティに遅れること3年目のことでした。
 セイヤーズはイギリスの名門オックスフォード大学で学んでおり、オックスフォードで学位を取った最初の女性の一人と言われる知識人です。彼女の学識の高さは作品内でも活かされています。シリーズ探偵のピーター・ウィムジィ卿が活躍する作品たちはミステリーとしての面白さはもちろん、その高い文学性からも評価されています。
 敬虔なクリスチャンであったセイヤーズは同時代のイギリス人のキリスト教信仰の衰えを憂い、後年はダンテの『神曲』の英訳に取り組んでいます。セイヤーズ訳の『神曲』は現在でもペンギン・ブックスで入手可能で、英語で読める『神曲』のスタンダードの一つとして今なお親しまれています。また、セイヤーズは若いころから詩作にも励み、その活動はミステリーの創作だけにとどまりません。
 また、セイヤーズ本人はそう考えられることを嫌ったとはいえ、彼女はフェミニストと評価されることもあります。それはピーター卿シリーズに登場するハリエット・ヴェインのセリフなどに顕著です。セイヤーズはミステリを執筆することに関して、「殺人はもっとも男女に隔てなく開かれた職業」(エドワーズ、P.224.)と冗談で語っていました。急進的なフェミニズムには背を向けていたことから、セイヤーズは穏健なフェミニストであったと言えるでしょう。
 さらにセイヤーズはT・S・エリオットやチャールズ・ウィリアムズ、J・R・R・トールキンといった多く同時代の作家と交流し、ディテクション・クラブというミステリ作家の集まりの第3代会長を務めました。(1949年から1957年まで。)現代イギリスのミステリ作家(特に女性作家)の指針にもセイヤーズはなっているようです。
 日本でも早くからセイヤーズは翻訳されてきましたが、満足のいくかたちでの紹介とは言えない状態でした。そのため、日本のミステリ作家へのセイヤーズの影響は限定的かもしれません。それでも、1990年代以降、浅羽莢子氏の翻訳が創元推理文庫に入り、ピーター卿シリーズの長編すべてを日本語で楽しむことができます。近年、モンタギュー・エッグものなどのピーター卿シリーズ以外のセイヤーズ作品も翻訳されるようになり、日本でもセイヤーズの全貌が知られるようになってきました。なお、本サイトにおける固有名詞の表記については、創元推理文庫の浅羽訳に従っています。
 セイヤーズをアガサ・クリスティと並ぶ「ミステリーの女王」と評価する人もいます。一般人気はさておき、評論家筋ではクリスティよりもセイヤーズの方が評価が高いかもしれません。今日でも、とりわけ女性ミステリ作家にとって、セイヤーズは今日までインスピレーションの源であり続けています。翻訳が遅れたこともあり、海外での評価に比べ日本での知名度はまだ高いとは言えないセイヤーズをこのサイトでは紹介していきます。

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